『かぐや姫の物語』(2013年)

かぐや姫の物語 [DVD]

監督の高畑勲が言いたかったことを全部理解できたとは思わないのだが、人間賛歌、自然賛歌の映画として見た。欠点はあっても、いや欠点があるからこそ、生命はそれ自体が美しい、みたいな。そういった意味では漫画版『風の谷のナウシカ』と通底するものがありそうである。

それでも、月に帰ることを望んでしまった頃のかぐや姫は本当につらそうだったなぁ。あんな状況なら月に帰ったほうが幸せなんじゃないかとも思ってしまった。ただ、月の世界はある意味「死の世界」(極楽浄土)なのだろう。仏教関係者、特に浄土宗や真宗の人はこの映画をどう見るのかな。

周囲の人間を色と金で惑わせ、人間のイヤな面をかぐや姫に見せたのは、月の王の策略なのだろうね。すべてお釈迦さま(阿弥陀さま?)の掌の上の出来事。

――と、いろいろ書いたけど、特に最後のほうの内容に私はイマイチしっくり来なかったのが正直なところ。ありのままの人間や自然に対して、私は高畑勲ほど価値を見出していないのかも。

さて音楽は、高畑勲とは初めての顔合わせになる久石譲。もっとも、この映画で一番印象的な曲は、高畑勲が作曲したという『わらべ唄』や『天女の唄』だと思った。