大安寺

大和の古寺〈4〉新薬師寺・白毫寺・円成寺・大安寺

平城遷都1300年祭ということで、今年は奈良で秘仏が特別開帳されている。なかなか時間が取れなかったのだが、なんとか日帰りで奈良に行くことができた。桜の季節の旅は良いものだ。
まずは大安寺。最寄りのバス停留所はイオンの大きなショッピングセンターなのだが、何も案内がない。イオンの人に尋ねてなんとか大安寺に到着。この辺りののどかな「田舎加減」は、私が子ども時代に育った場所に近いね。
今回の大安寺でまず注目すべきは、特別開帳されている本尊の十一面観音菩薩立像奈良時代・重文)と馬頭観音菩薩立像奈良時代・重文)である。
本堂の十一面観音はちょっと拝観しづらいのだけども、まあまあ近くから見られる。明らかに頭部が後世の後補なのだろうが、この後補の頭部が個人的にはかなり好み。もっとも、ぜんぜん天平仏っぽくないので、元のお顔とはかなり異なるものなのだろうけど。
本堂の奥の嘶堂(いななきどう)の馬頭観音は、すぐ近くから拝観できるのが嬉しい。頭上に馬頭がないのが特徴だが、もともとないのか途中でなくなったのか諸説あるらしい。
讃仰堂(宝物殿)は、なぜか横の裏口から出入りすることになっている。数多くの天平仏を近くから拝観できるが、一番有名なのは楊柳観音菩薩立像奈良時代・重文)だろう。楊柳観音の仏像自体が珍しく、また普通はこのような憤怒像では表現されないようだ。
ちなみに、本堂の右隅に一見古そうな虚空蔵菩薩坐像があるが、これは江戸時代以降の作らしい。左隅の小さな十一面観音菩薩立像も近世の作とのこと。また、本尊の十一面観音の向かって左側には若いころの弘法大師の立像がある。このへんの情報は、拝観案内所の若いお坊さんに教えていただいた。
往時は大寺だったという大安寺は、大仏開眼の導師であるインド僧の菩提僊那も住んでいたそう。他のお寺ではあまり見かけない雑密系の天平仏の宝庫である。