『千と千尋の神隠し』(2001年)

千と千尋の神隠し (通常版) [DVD]
濃密で独特な世界観に圧倒された。よくぞこんな世界を思いついたねぇ。宮崎駿はこの作品で本当の巨匠扱いされるようになったと記憶している。彼の最高傑作のひとつなのは間違いない。

これまでの宮崎作品と違うのは、主人公の女の子(千尋、別名「千」)があまりかわいくないこと(失礼)。そのぶん萌え要素(?)が後退して、老若男女が楽しめる作品になったと思う。どちらかと言うと、相手役のハクの美少年ぶりに萌える映画なのかも。

好きな場面は最後の「大当たり!」のところ。カタルシスを感じる。好きな登場人物は頭(かしら)。効果音が面白い。

さて音楽を担当しているのは、もちろん今作も久石譲。ただし、主題歌の『いつも何度でも』は木村弓が歌と作曲を担当している。透明感のある歌声がこの映画に合っていると思う。

ただ、久石譲が作曲した『いのちの名前』も遜色のないできなんだよね。映画では歌なしのインスト版が使われていて、歌入りはシングルとして発表されている(サントラには入っていない)。久石は悔しかったんじゃないかなぁ。

『ふたたび』も印象的な佳曲。

千と千尋の神隠し―Spirited away (ロマンアルバム)
ところで、ジブリ映画公開時にはたいてい『ロマンアルバム』というムックがつくられるのだが、この映画のものは特に充実している。

興味深いのは作画監督安藤雅司へのインタビューで、どうやら彼は作品の出来に満足していないもよう。作画の表現方法の方向性について宮崎駿と意見が合わなかったそうな。宮崎駿の感覚志向に対し、安藤雅司のリアル志向という違いがあるとのこと。

千尋の活躍ぶりにも不満があったようで、彼は千尋が理想化されすぎていると感じているそうな*1。確かに映画後半の千尋はスーパーヒーロー(ヒロイン)的な大活躍を見せる。私自身は気にならなかったけどね。

*1:ちなみに、宮崎駿自身が初期構想段階で描いていた千尋の顔は映画版よりももうちょっとかわいらしい。映画版の千尋の顔は安藤雅司の意向と思われる。