『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)

借りぐらしのアリエッティ [DVD]

人間を恐れつつも人間の食料や生活用品を「借り」て暮らしている小人たちの物語。監督は米林宏昌で、宮崎駿が企画と共同脚本を担当している。メアリー・ノートンの小説『床下の小人たち』が原作。

映画では舞台を現代日本に移しているが、小人たちはコーカソイドのように見える(つまりたぶん原作のママ)。途中から出てくるスピラーという名前の小人はモンゴロイドか何かのようだけど*1

評判どおり地味といえば地味な作品。設定が面白いので、適当にエピソードをつくって連続ドラマ形式にしても面白いかも。一話完結にしてもいい。ネタが尽きたら適当に新しい家に引っ越せばいいし。

小人の生活についての細部の描写に力を入れている。個人的には、壁に飾る絵の代わりに人間の切手を使っているのが愉快だった。私が気が付かなかった小ネタもたくさんあるのだろう。映画を見るまでは主人公アリエッティの頭から妖精みたいな触覚が生えているのかと思っていたが、あれは洗濯バサミらしい*2

小人は魔法みたいなものは使えないが、とにかく軽業師のように身軽である。小人は体重が軽いので、人間より運動神経が発達していてもおかしくないかもね。ただ、小人と人間の間で言葉が通じるのはいかにもファンタジーだなと。

人間側の主人公である翔は心優しい人のように見えるのだが、突然アリエッティに対し厳しいセリフを言う場面にはちょっと驚いた。「人間と小人、どちらが滅びゆく種族なのか」というこの映画の主題を匂わせたかったセリフだろうが、この映画ではその主題をうまく表現できていなかったように思うなぁ。

さて、音楽はセシル・コルベルというケルト音楽系のハーブ奏者が担当している。この人はとにかく声がきれいだね。片言の日本語で歌う主題歌 “Arrietty's Song” よりも、オープニングに流れる “The Neglected Garden (荒れた庭)” のほうが好きかなぁ。

ただ、セリフのある場面で歌入りの曲を流すのは感心しなかった。

*1:彼は「借りぐらし」をしていない野生児と思われる。

*2:ただ、洗濯バサミにしては小さいのでは。クリップくらいの大きさである。